奥河内 岩瀬薬師寺の賓頭慮 尊者(びんずるそんじゃ) 

1:賓頭慮尊者とは
(1)釈迦の弟子で十六羅漢の一人。名をビンドラ(漢訳・賓頭慮)と言い「不動」の意である。
(2)様相は、白髪、長眉の阿羅漢。阿羅漢とは、尊敬を受けるに値する人、聖者、仏の意である。
(3)神通力と説法に優れた能力を持っていたが、神通力をみだりに弄んだため、釈迦より叱責を受け、そのため涅槃(ねはん)を許されず、釈迦の入滅後も衆生の救済に尽くすようにと命ぜられた。
(4)ライオンは、そのひと吼えで周囲を威圧させるが、尊者の説法も人の異論や反論を全く受け入れることがなく、獅子吼(ししく)と呼ばれた。

2:愛称・撫で仏、おびんずるさまびんずる尊者
(1)病人が自分の患部と尊者の同じところを交互に撫でると、病気が治ると言う信仰があり、「撫で仏」とか「おびんずるさま」と呼ばれ親しまれている。
(2)そのため尊者像は木造であるにもかかわらず、金銅造りのように光沢がある。   
(3)この像の顔や頭は磨耗しているが、それがいかに多くの人たちから信仰されていたかの証でもある。

3:酒の失敗
(1)酒が尊者の大好物。修行の合間にも嗜んでいたが、これがバレ、「しまった」と舌を出したと。
(2)また赤い顔をしているのは、酒に酔っていたからとか、あるいは怒られて赤面しているからとか言われている。そのため尊者像は「舌を出した赤ら顔」である。そして、
(3)修行中に誘惑に負けて酒を飲んだため、釈迦が遠避けたが、その後、尊者も改心したので、本堂の外陣か前縁ならと許された。
そのため尊者は、今でも内陣に入れず外陣か前縁に座らされている。

4:びんずる回し
長野の善光寺では、新年恒例の行事として、1月6日の夜に「びんずる回し」が行われる。 参拝者が尊者の像を本堂内で引き回し、福シャモジで賓頭慮像に 触れたり叩いたりして無病息災を祈っている。
5:賓頭慮尊者像は、どこに
(1)河内長野市 観心寺
(2)河内長野市 岩瀬の薬師寺

6:川柳
* びんずるの 撫で所なき 恋の願い (恋の願いは、撫でところがない)
* どもり願掛け びんずるの口を 吸い
*  撫でさすり 四百四病で はげ給い
(さすがの尊者も四百四もの病名で撫でさすられると、塗装もはげてしまった)

(横山 豊)