恋の石が滝畑に!!【河内長野 こんなオモロイとこ!!】

ハート形の手水鉢がある。
手水鉢の水穴には、単に“凹み”を穿っただけのモノが多いが、“ヒョウタン形”や“扇形”のモノ、あるいは“舟形”や“魚形”のモノなど、いろいろな形のモノがある。しかし“ハート形”をした手水鉢は極めて少なく珍しい。
ハート形は、我が国では古来より“猪の目(いのめ)”と称されてきた。そしてこの猪の目は、寺院の懸魚に多く見られる。

懸魚は、その形により“猪の目”懸魚や“鏑”懸魚、あるいは“梅鉢”懸魚や“三つ花”懸魚などがあるが、そのうちでもハート形にくり貫かれた懸魚は、“猪の目”懸魚と言われ一番多く用いられている。
ところで寺院の懸魚に猪の目が多いのは、厄除けの意味があるからとされるが、仏教の始祖・釈迦に由来しているとも考えられている。
仏教での聖なる木は、無憂樹(むゆうじゅ)と菩提樹、そして沙羅双樹の三つであるが、釈迦はこの菩提樹の木の下で悟りを開いたと伝えられている。
この菩提樹の葉の形が猪の目に似ていることから懸魚のように寺院建築の装飾に多く用いられてきたと考えられる。
また江戸時代の画家・伊藤若冲になる「動植綵絵」の“老松白鳳図”には、赤や緑色のハートがたくさん描かれている。
このように日本人にとって“猪の目”は、極々ありふれた、しかも非常に親みやすい模様だったと考えられるが、懸魚以外ではなぜか使われず、手水鉢でも猪の目が穿たれたモノはほとんどない。

ところで愛や恋を表す時“ハート形”で表現されることが一般的である。

相手に好意をもっている時は、目がハート形になり、また恋に落ちた時は、矢が刺さったハートが、そして逆に恋に破れた時は、亀裂が入ったハートが描かれる。
このようにハートを使って愛や恋などの恋愛感情が表わされてきた。また近くは、ハートの絵文字がしばしば使われるし、ハートをハンドジェスチャー表現することも多い。
なお愛や恋の話になると、“猪の目”というより“ハート”と言ったほうが、なぜかシックリする。そのためこの“猪の目”形手水鉢は、“ハート”形手水鉢と言ったほうが現代受けするし、さらに“恋の石”と表現すると、もっと受け入れ易くピッタリする。

ところで、この猪の目形手水鉢を観光資源として活用するのも面白いかも知れない。
河内長野に“恋の石あり!!”とか、“恋にご利益あり!!”とか。あるいはこの手水鉢をもっと大きくしたレプリカを河内長野や三日市の駅前、あるいは道の駅“くろまろの郷”に飾り、その手水鉢の中に二人座って写真が撮れるようにする。まさに恋の石である。
素晴らしい観光資源になりそうであるが・・・。
しかしあるべき所にある。これがやはり一番重要なことかもしれないが・・・。
なお“恋の石”(猪の目形、ハート形手水鉢)は、滝畑ふるさと文化財の森センターだけでなく、石仏寺でも見ることができる。

(筆者注)
(上)菩提樹(シナノキ科)の葉
(中)滝畑ふるさと文化財の森センター
(下)石仏寺
R2・5・18  横山 豊