河内長野の滝、シャングリ・ラにシャダの滝がある【河内長野 こんなオモロイとこ!!】

 どこに存在しているのか解らない時、しかもそこが理想境であり夢の国である場合、我々はしばしば“ユートピア”とか、“桃源郷”とか、そして近年では“ネバーランド”などとも言っている。
 『ユートピア Utopia』は、イギリスの思想家トーマス・モアが1516年に描いた理想境で、“ユ U”は、無い、“トピア topia”は、場所の意で「どこにも無い場所」を表している. 
 またイタリアの哲学者カンパネッラが著した『太陽の都』(1602年刊)も理想社会を描くことで現実社会の問題点を指摘したものである。
 そして陶淵明が描いた“桃源郷”や宮沢賢治の“イーハトーヴ”、あるいは童話『ピーターパン』に登場する“ネバーランド”や“オズの国”なども理想境とされ、そのような所は数知れない。

 しかし“シャングリラ Shangri-La”は、ジェームス ヒルトンが著した『失われた地平線』に登場する理想境で、しかもチベットの奥のヒマラヤ山脈の西の果ての高峰の麓の、しかも霧の漂う谷間に存在する理想境として描かれている。ほかの理想境や夢の国と異なりシャングリ・ラは、その場所がある程度特定されているのである。

 ちなみに“Shangri-La”のShangは、シャン地方、riは、山、そしてLaは、峠を表し、“Shangri-La”とは“シャン地方の山の峠”を意味するチベット語だそうである。

 私は、“シャングリ・ラ” と言う言葉が好きである。
 学生時代、ヒルトンの『失われた地平線』を読み、また50年ほど前、同名のミュージカル映画を見たことが今も懐かしく思い出される。
 ところでシャングリ・ラは、理想境であるが、そこがどこにあるのか言いたくない時、我々はしばしば“シャングリ・ラ”と言っている。
 “シャングリ・ラ”は場所を言いたくない時、具体的な地名を言いたくない時の便利な地名である。そして言った者も言われた者も何となく納得している場所、それが“シャングリ・ラ”である。

 河内長野のシャングリ・ラに“シャダの滝”がある。
 滝幅はおよそ20m~30m、落差8m以上はあろうか。その場所は?? それこそ“長野のシャングリ・ラ”である。
シャダの滝は、ほとんどの人はその存在すら知らない。私も偶然に見つけた時は大いに驚き感動した。
那智の滝のようにまっすぐ一直線に落下していないし、ナイアガラのように幅広でもない。バランスよく広がった滝は、いつまで見ていても見飽きない。

 ところで“シャダ”の意味であるが、未だにハッキリと解らない。
 地元の人の話では、元々は“砂田(スナダ)”と呼んでいたのが“砂田(サダ)”に変わり、それが訛って“砂田(シャダ)”になったようである。なお滝の両側の土地は、砂交じりの田畑でもないとのことである。そして興味深いことは、当地では、“砂”のことを“シャダ”とも言うそうである。

 この滝の周辺ではホタルの乱舞が見られ、昔は滝の辺りは川砂も多く近所の子供たちが水遊びを楽しむ場所だったようである。
                

                    R2・8・24   横山 豊