ササユリ 奥河内の勝光寺にゆれる!!

ササユリ南海・三日市町駅の南西の住宅地・南花台のそばに日野浄水場がある。滝畑湖で採水された湖水の水は、この浄水場に送られ、ここで浄水となって市内の各家庭に送られている。
この浄水場の東の麓に勝光寺がある。
当寺のご本尊は、勝負宰不動明王と言い勝負の仏さまとして、またこのお寺は、「ササユリのお寺」としても親しまれている。そして6月10日頃、当寺の境内で美しいササユリの花を楽しむことができる。
このササユリは、最近ほとんど見なくなった。
20年も昔のことであるが、金沢の知り合いからこのササユリをもらって庭に植えたが、うまく育てることができなかった。ササユリ
次に、このユリを見たのは当寺で、である。
ササユリは、その葉や茎が笹に良くに似ていることからこのような名が付いた。
昔から美しい人の例えとして「歩く姿は百合の花」と言われるが、このユリの花を見ているとなぜか納得する。
上品な淡いピンク色の花は、恥じらう乙女がほんのりと紅を指したように見える。深い緑の中にキリとした立ち姿で咲いている。そこに清楚さと共に可憐な姿から醸し出される気品すら感じる。
特に梅雨の頃、ヒンヤリとした、なぜか湿っぽい林の中に、そして静寂に包まれた森の中にヒッソリと佇んでいる。それがササユリから受ける風情である。
ササユリそしてカメラを向けると、撮られるのを嫌がっているかのように優雅に揺れる。そのため何時まで待ってもシャッターチャンスがこない。優雅に揺れる。
この揺れるから「揺り(ユリ)」と呼ばれるようになったと言われ、これがユリの語源になった。
このササユリには、地理的に変異したものが多くある。
例えば、熊野山中には香りが強いニオイユリ、徳島の伊島に生息し葉幅が広いイシマササユリ、同じく徳島の神山町神領(じんりょう)村には最も小型のジンリョウユリ、
さらに宮崎に分布するヒユウガササユリ、そして日本海側には、葉幅が広いヒロハササユリがあるようであるが、残念ながら筆者は一般的なササユリしか見たことがない。 
このササユリは、日本の固有種で学名はLilium Japonicum と言い、Liliumはギリシャ語の「白」、
Japonicumは「日本の」という意味だそうだ。  
当寺では、かって多くのササユリが見られたが、その球根をイノシシに食べられ、最近はその数も減ってしまったとのことである。

ササユリササユリについて興味深い話がある。
奈良市内に鎮座する率川(いさがわ)神社の例祭は、「三枝祭(さいくさのまつり)」とか「ゆりのまつり」とか言われ、毎年6月17日に催される。
この三枝祭は、大宝律令(大宝元年・701制定)に規定された国家の祭祀で、厄病を鎮めるお祭りのようであるが、後世、このお祭りは、開催されなくなっていた。しかし明治14年に復興され現在に至っている。
ササユリの古名は「佐韋(さい)」と言われるが、この三枝(さいくさ)の花はササユリを指している。
神話では、当神社の祭神で、神武天皇の后であった媛蹈鞴五十鈴姫命(ひめ たたら いすずひめ の みこと)が三輪山の麓・狭井川(さいがわ)のほとりに住んでいた時、付近にササユリが咲いていたので、この姫さまをお慰めしようと、今も酒樽にこのササユリを飾ってお祀りしているとのことである。
この祭りは、優雅な雅楽の音に合わせて三輪山に咲くササユリを飾った酒樽を神前に供え、巫女たちもこのササユリを手に持って神楽を舞う優雅で美しい花の祭典である。
なお、このササユリは花の文化園でも見られ、河内長野では、数少ないササユリの花が楽しめる所である。                    
西風狂散人(かわちのふうきょうさんじん)