馬酔木(アセビ)の花に酔う!! 松林寺の歓喜天と共に!!

西高野街道と中高野街道に挟まれた地・松ケ丘に松林寺が建つ。
当寺に面白い仏様が祀られている。
仏様は、ふつう人間の形をしているが、異形の仏様もおられる。その筆頭が歓喜天(かんぎてん)、愛称は、聖天(しょうてん)様である。
この像は象頭人身の男女の二天が抱擁しており、その姿から夫婦和合の神、あるいは子宝の神、そしてまた除災招福の神として知られている。
抱擁している一方が足の親指で、もう一方の足を押さえ踏みつけているが、踏みつけているのが十一面観音の化身、踏まれ押さえつけられているのが悪行を重ねている牡(オス)の象である。
馬酔木
一般にいろいろな教えは、人間の欲望を抑えることによって悟りが開かれ、幸福が招かれると説くが、密教では、積極的に欲望を認めることによって幸福が得られ悟りも開かれると説く。
ただこの歓喜天、淫らな心で見ると祟りがあると言われ、通常はこの仏様は秘仏として公開されていない。そのためご開帳もない。筆者も残念ながら一度も拝ませてもらったことがない。

この寺に馬酔木(あせび)が咲く。
馬酔木馬酔木は「あしび」とも「あせぼ」とも言われ、日本の固有種。そのため万葉集の時代から歌に詠まれてきた。小さな壺形の白い花を下向きに幾つも付けて咲き、微かに香る。何か奥ゆかしい香りでがする。
名前の由来は、馬がこの葉を食べるとその毒に当たり、酔って脚が萎えることから、この木は「足廢(あしじひ」と呼ばれ、それが変化して「あしび」「あせび」になったと言われている。あるいは葉の毒は、虫除けの薬としても効果があるため「山遊び」をする時に使うことから「あしび(遊び)」に変化したとの説もある。

この木は毒があるため多くの動物は食べない。馬酔木そのため「シシクワズ(鹿食わず)」と呼ばれることもある。
また毒があるため、この葉を煎じたものは殺虫剤として使われている。
従って、馬も鹿も馬酔木の毒を知らないはずがない。「シシ(鹿)」は食べないが「馬」が食べるとも考えられない。人間なら食べるかも知れないが・・・。
むしろ毒がなくて酔える木を食し、歓喜に酔ってみたいものである。仏様のように。
ところで、馬酔木は日本の固有種のため、全国の山地に自生しているはずであるが、当河内長野では、なぜかその場所を知らない。なお寺院では鬼住・延命寺でも数本見られる。

なお、明治36年(1903)から5年間、発行されていた短歌雑誌は『馬酔木(あしび)』と言ったそうである。

西風狂散人(かわちのふうきょうさんじん)